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井上雄彦の表現

昨日は久しぶりに漫画喫茶に行き、『SLUM DUNK』などをパラパラと読んだ。
井上さんの漫画というのは、特に『SLUM DUNK』と『バガボンド』は、その大半が戦いの場面で占められている。
戦い以外の部分は“つけたし”的な位置にあり、その戦いを盛り上げるための最低限の仕事をすればいい。
もっとも『ドラゴンボール』や『男塾』に比べればはるかにストーリーがある、と言えるのかもしれないが(笑)

何にしても、井上氏の漫画は戦いを面白く見せることが非常に上手い。
今思い出すのは以下の二つの場面。

『バガボンド』
宍戸梅軒という鎖鎌の達人を追っている、ある武士。
梅軒の娘で同じく鎖鎌使いである少女と戦っているところへ、本物の梅軒が現れる。
ギョッとするが、しかしそれでも娘の鎖鎌と渡り合えたことに希望を見いだそうとして――よかった、技を一度見ておいて――と思った次の瞬間に、鎖鎌の反対側についている鎖分銅で顔の右半分を粉砕される。

武士が殺される直前に、彼に自信があることを示すようなセリフを(心中で)言わせたのには二つの効果がある。
(1)戦いが長引くのではないかという、実際とは逆の予想を読者にさせ、武士が殺される場面の衝撃度を増す。
(2)鎖分銅が飛んできたのが、武士がまだ考えている最中であったこと――すなわち、彼には分銅がまったく見えなかったことを表現している。

『SLUM DUNK』
有名な場面の一つ。
対山王戦、ポジションをとれていないのに相手選手の後ろからリバウンドをとるという離れ業を桜木花道がやった後。

 諸星 「高い ! ! 」
 牧 「いや、それより……」
 山王コーチ 「速い ! ! 」

広い会場の別の場所にいる3人が、こういう風につなげて一文となるようなセリフを次々と言うわけがない。
これは、桜木のリバウンドを見れば、分かる人間なら誰でも同じ事を考えるということを表現している。
ちなみに山王コーチの堂本さんのセリフが最後にきているのは、桜木を見て一番脅威を覚えるのが相手コーチであるという暗示。

※言うまでもないが上の考察はすべて僕の推測であり、井上さんが本当にこういう意図で描いたのかどうかは全然知らん。

僕は最近の『バガボンド』については気に入らん点もないではないが、それについては以前の日記に書いた。
願わくば、『SLUM DUNK』を再開してほしい。
今は「ジャンプ」連載時とは違い、ある程度自分の都合で描ける自由があるはず。
(実際、『バガボンド』はえらく休載が多い)
あの傑作が途切れたように終わったままであるのは残念だ。
by SAKICHI_I | 2004-12-07 00:54 | その他 | Comments(4)
Commented by taketoshinkai at 2004-12-07 11:48
「バガボンド」は隔週連載なんですよね〜。まああのクオリティですからしょうがないような気もします。たとえ毎週描いてても、「HUNTER×HUNTER」みたいなほぼネーム状態だったら見る気しませんから。

僕は「SLUM DUNK」はあのままでいい派です。あの後をどう描いてもどうせ不満ばかり出ると思うから。井上氏の違うバスケマンガが見たいな。NBAものとか。

佐吉さんは「リアル」はどうですか?
Commented by SAKICHI_I at 2004-12-07 21:24
>たけこしさん
同意ですね。モーニングはずーっと前は隔週発売でしたが、毎週となった今あの当時に比べて雑誌が全体的におもしろいとは言えないと思います。
「HUNTER×HUNTER」てよく知りません……(汗
スラダンは、後日談みたいなのでもいいからあの後どうなったかが知りたいです。ピシッと終わってもらいたいというか。
さて「リアル」ですが、ああいうシリアスで重いテーマが井上さんの絵に合うかどうかは分かりませんが、ストーリー自体は好きですね。足を無くした人達が悲観的でなく、強く生きているのがいいです。
Commented by taketoshinkai at 2004-12-08 11:31
井上氏はほんとすごいマンガ家ですよね。あんなすごい人がバスケのマンガを描いてくれるなんて、バスケ好きにとってはほんとラッキーです。
ちなみに僕、「たけこし」では無くて「たけと、しんかい」なんです(笑)
Commented by SAKICHI_I at 2004-12-08 23:43
>taketoshinkaiさん
名前を間違えましてどうもすいません(;´Д`) (しかも二重に間違えていますね) 「たけとし」「んかい」で切るのはどう考えても変ですもんねえ。
井上氏の件はまったく同感です。何を書いても傑作になったとは思いますがそれがバスケだったのはまったく幸運でした。


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