最近読んだ本の感想を、忘れないうちに書いておく。
最近、といっても相変わらずのろのろ読んでいるので、数ヶ月前のものを含む。 ミステリーを中心に、何とか賞やかんとか賞をとった小説、ベストセラーになった小説を選んで読んでいる。 みな有名な作家らしいが、僕はどの人の小説も初めて読んだ。 乃南アサ 『凍える牙』1996年 事件を追うストーリーであるのと同時に、主人公である女刑事の、警察という男社会で働くことのつらさを描く小説。その重さと息苦しさに少々へきえきする。時折描かれる、狼犬のさっそうとした美しい姿だけが救い。 桐野夏生 『顔に降りかかる雨』1993年 全体をつらぬく倒錯と退廃、ドロドロ感……がけっこう好きだ。最後に主人公が2ページぐらいベラベラしゃべって一挙に謎解きをするのはどうかと思う。「お分かりかなワトソン君」といつ言うのかと思った。 高村薫 『マークスの山』1993年 ハッタリが構成要素の大部分を占める小説である。どぎつい描写で、いったいこれが事件の真相とどうつながるのかという期待をいだかせるが、そのほとんどは何も説明されないまま終わる。 出てくる刑事が、揃いも揃ってとんでもなく短気。「黙れ!」「そんな場合か!」「そやから言うたやろ!」 怒鳴りっぱなしである。いくら凶悪事件を追っていても、そこまで四六時中顔を真っ赤にしてる奴らはいない。読んでいて疲れる。 ここまで女性の作家が3人続いた。 まったくの偶然。 東野圭吾 『殺人の門』2006年 恐るべき小説。一人の善良な普通の人間に殺意が蓄積される過程を描く。 相手のことを気遣う様子を見せながら、実は自分がいかにして利を得るかということしか考えていない人間。誰でも知り合いに一人くらいこういう人間がいる。主人公はそういう人間に終生だまされ続ける。冷静に考えれば、それほどだまされ続けるのは不自然。だがその描写の見事さにより、だまされても仕方ない、と錯覚させられる。ラストシーンでは読者に、主人公と同じように殺意が蓄積されている。 それが現実にも起こりうる、という恐怖。それが読後感。 この地味な展開の小説を、600ページに渡って読ませる。 東野圭吾、これからコレクションを始めることになるだろう。 石田衣良 『池袋ウエストゲートパーク』1997年 読む前は、若者の感覚に調子を合わせる軽薄な小説家と思っていた。10ページ読み進んだ時の感想も同じ。だがこの作品、若者の悲しみにもけっこう真摯に向き合っているのである。 好きか嫌いかといえば、それほど好きな小説ではない。だが馬鹿にしたものでもない、と思う。
by SAKICHI_I
| 2006-09-13 19:08
| ただの日記
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Comments(2)
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